もし僕が十代だったら、今日この日から人生が変わっていただろう。
長渕剛のツアーだ。
初日、横浜アリーナ。
すごかった!
ヤバかった!
開演を待ちわびる鳴り止まない剛コールの中、BGMが切り替わり、大音量のロックンロールが響き渡る。
地明かりのままメンバー、長渕剛がステージに登場。
そしてなんと、そのままラフに演奏が始まった!
こちらが身構える前に、いきなりガツン!と一発お見舞いされた感じ。
シルエットに浮かび上がるのは、日米がタッグを組んだニューBand!
ピーター・ソーン(Gt)、ジョン・バトン(B)、ローレン・ゴールド(Key)、ichiro(Gt)、昼田洋二(Sax)、矢野一成(Ds)、陽子&佐江子&MAYUKA(Cho)。
長渕剛は、真っ赤なレザージャケットに白いシャツ、黒いストールを巻き、パンツはブラック一色ながら、フロントのデニムとバックのレザーがひとつになっているというスタイル。なんだかBandをスタイリングで表現しているよう。
これまでとは違う。ぜんぜん違う!
キレッキレのサウンドもワールドワイドな見た目も最高にクール。だけど何より違うのは、メンバー同士の距離感や体温が、近くて熱いんだ。
こんな長渕剛、見たことない! こんなBand、はじめてだ!
とんでもないことが起こるぞ!
もう、鳥肌が止まらない! 驚く間もない! ただただカッコ良さにノックアウトされてる。
まだ子どもだった頃、音の悪いラジカセから聴こえてくるロックンロールに夢中になった時のことを思い出した。胸に熱いものが込み上げて来る。最初っからそんなに飛ばしまくって大丈夫? 自分で自分を心配しているのに笑ってしまった。
「バカヤロー、もっと派手に行こうぜ!」
目の前のイカしたロックンロール・バンドが舌を出す。
長渕がジョンの肩に手を掛け、1本のマイクで二人がシャウトする。
ピーターとichiroが背中合わせになり、火花を散らせながらお互いのギターを感じ合っている。
昼田のSaxはバンドとオーディエンスの感情をつなぐ虹の架橋のように響き渡る。
そして矢野のいたずら小僧のように楽しそうな笑顔がステージ全体に弾けている。
上手のローレンと下手のコーラス陽子&佐江子&MAYUKAがアイコンタクトして、ダンスを合わせる。
フロントの5人が一塊になって、前に突き出たステージ上でステップを踏んでいる。
人間と人間のぶつかり合い、愛情、尊敬……それらがロックンロールになって放たれている。
そうだ。そうなんだ。僕らが感動するのは、決まって〝そこ〟なんだ。でも、〝そこ〟を鳴らしてくれるロックンロール・バンドがいったい今、世界にいくついるっていうんだ?
ここにいるよ。
僕は声の限り叫びたい!
肉体と魂がひとつになった本物のロックンロール・バンドがここにいるぞ!って。
今日はまだ初日だ。
なのに、へとへと。
そして、最高に心地いい。
これを待ってたんだな――。
もし僕が十代だったら――いや、何歳だってかまわない。
ロックしつづけてたら、年なんて取らないんだ。
長渕剛と彼のニューBandが教えてくれた。